GA文庫の新人賞作品「魔人の少女を救うもの」を読んだ。
本作の主人公ウィズは、はやりの異世界転生ものの主人公とは対極の立場にいる。
特に強くない。
特別な知識もない。
隠された能力もない。
善良なだけの、そこらへんにいくらでもいそうな冒険者である。
「英雄の親友」ということがウィズの唯一の特殊な要素になるのだが、それすら彼に有利に働くことはなく、むしろ英雄の足を引っ張る無能と蔑まれる。
ヒロインのアローンもまた悲惨な人生を歩んでいた。
彼らは偶然出会い、行動を共にすることになる。
道中、大なり小なり彼らはいろんなものを失い続ける。
しかし、一つだけ貴重なとある何かを手に入れることになる。
読者を無条件に気持ちよくさせる仕掛けはほぼない。
ウィズとアローンが得たものに価値を見いだせたら、読者の勝ちだ。